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■ 日本の広島に原爆が落とされて(2)

   ■ 日本の広島に原爆が落とされて(2)
もうすぐ8月6日がやってきます。広島に原爆が落とされた日です。
肥田舜太郎さんは軍医でした。爆心地からたった500メートルしか離れていない第一陸軍病院で、仲間と入院患者たちといっしょに、即死しているはずでした。
それが、広島から6キロ離れている戸坂村に住んでいる農家のおじいさんから、とつぜん孫の往診を頼まれたおかげで九死に一生を得ました。
救援に向かった広島はどうだったのか。続いて第2回目をお送りいたします。
「ヒロシマの記憶 原発の刻印」肥田舜太郎/遊絲社(ゆうししゃ)の一部を順次紹介していきたいと思います。

     ★「ヒロシマの記憶 原発の刻印」より抜粋、第2回目 ★
私は、川の流れのなかを一生懸命歩いた。しかし、陸軍病院に向かっているあいだにも、七、八メートル上から、人間が落ちてくる。どしゃっという音とともに。這ったり歩いてきた人間が、川の水を飲もうとして、そのまま、まっすぐ落ちてくるんです。
川にばしゃんと落ちる。あとは川底を転がって、すうっと流れて行く。

もうちょっとで広島というところまで行ったら、ちょうど広島は燃えている最中でした。
ごうごうと猛烈な風が吹いていた。火事が起こした風です。火事の現場では、家が一軒燃えていても、ものすごい風が吹くんです。それがもう、街中が燃えているんですから。
熱風がごうーっと吹いてくる。そうすると真っ黒い煙があたりを蔽って、何も見えなくなる。流れている川が熱風ですくわれる。頭からざぶーんと波をかぶる。

登ろうとする石垣の上が、燃えているんです。川っぷちまで家があるんですが、それがいま燃えている。
燃えている家の火のなかから、火に焼かれた人々が次々と川に飛び降りていました。
みな、上半身は裸です。いま焼けたばっかりですから、全身が真っ赤です。
目の前の石垣から、体を火に焼かれた人が、こぼれ落ちるように川に飛び込むんです。
もうすでに何人かが落ちていて、死んでいる。そこへ人がさらに落ちてきますから、死体の上で体がはねる。
死体にはねた人間が、ばしゃんと水に落ちる。私の周りで、そういうことが起きている。
それでもまだ生きて頑張れる人は、起き上がって、必死に向こう岸へ歩いて逃げようとする。
そのまま流れていっちゃう人もいる。
人間が次から次へと飛び込んでくる。人が落ちてくる。
死体、そして生きている人。
流れていくのと、歩いていくのと。

歩いている人もいっぱいそばを通る。みんな腰から上が焼けている。どの顔もこの顔も、猛烈に焼かれている。すごい顔ですよ。それでも生きて歩いている。この地獄から逃げ出そうとしている。

川のなかは、すでに死体がいっぱいになっていた。
川の水は、自分の足が見えるような、透明なきれいな川です。川底の砂の上を流れて行く死体もある。見るとそれは、小さな赤ん坊の死体だった。
自分はどうしたらいいのか。
この人たちをどうしたらいいのか。
空を見上げると、この地獄の上の空は明るかった。夏の青空に傘を開けるだけ開いたきのこ雲が五彩に輝き、上からせせら笑っているようにこの地獄図を、そして私を見下ろしている。
Hirosimagenbaku

医療器具もなくただ立ち尽くしているだけではなんにもならない。ここは村に戻ってそこで村人といっしょに医療体制を整えるべきだとも考えましたが、この人たちを捨てて逃げるようなことになるのではという気がしてきます。
上流から兵隊を乗せた和船がやってきました。私の近くまでくると、将校がじゃぶんと水の中に飛びおりて、兵隊にも川に飛び込ませて船を押さえさせた。そしてその将校が私のそばまで歩いてきて
「おまえ、医者のくせに、こんなところで何をしている!」
って言う。
顔見知りの将校でした。私は、
「何してるって、いまから病院に行こうとしている」と答えた。
「馬鹿言えっ! この火のなかに入って何ができる。病院があるかどうかも分からん。もし病院が残っていたら、おまえが村で医療活動をしていると病院長に俺が報告してやるから、すぐここから引き返せ。村へ行って医者の仕事をしろっ!」と言うんです。
言われてみればそのとおりだ。それでやっと決心して、「じゃあ、あとは頼む」と川をのぼって、三時間くらいかけて村へ戻りました。戸坂村へ川の水をかき分けての戻りは、とてつもなく長く感じました。

息を切らせながら、戸坂村の近くの堤防を上がった私は、呆然としました。逃げてきた人が、道路といわず空き地といわず、校舎の残骸が散乱する小学校の校庭といわず、見渡す限りいっぱい倒れている。村は負傷者で足の踏場もない。村の入口辺りでは、肉塊が山のように重なりあっている。下になった人は死んでいるのか、死臭と血の臭い、焼けただれた肉の臭いが混じりあった異様な臭いが辺り一面に漂っている。目玉が飛び出し胸の上に垂れ下がっている者、肛門からはらわたがはみ出している者もいます。そこへ引きも切らず後から後から、血みどろの人が、大火傷を負った人が次から次へと死体を乗り越えてやってくる。村の奥へ、奥へと。
校庭の隅に作られた治療所。
最初の晩にきたのが六〇〇〇人です。

Hon_hida

shine 遊絲社 「ヒロシマの記憶 原発の刻印」出版にいたるまで
http://www.yuubook.com/center/hanbai/syoseki_syousai/syousai_hiroshimaki.html

人口わずか一千四百人の小さな村に六〇〇〇人ですから。六〇〇〇人がきたら、もういるところがないんですよ。
あらゆる地べたに、空き地に、寝ている。
四日目の八月九日の朝には二万八〇〇〇人になった。
  (続く)

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